細川侯五代逸話集
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161 千鳥の香炉 いつの年だったか、旧暦八月十五日の夜に蒲がもう生氏うじ郷さと公が茶人・千利休を引き連れて幽斎公の屋敷にいらっしゃった。幽斎公はお喜びになり、氏郷公をもてなされた。 ちょうどその時は、月に暗いところがなく冴えわたっていて、しめやかにお話をなさっていたところ、氏郷公が「前々から幽斎公のお持ちの調度には、名器と名高い千鳥の香炉があると聞いております。よい機会なのでぜひ見せていただきたい」と申し出られた。すると、幽斎公は「今宵は時機が良くありません。またよい機会もあるでしょう」と言って香炉をお出しにならない。 ところが、氏郷公は強引に頼み込み、香炉を出してもらわれた。幽斎公は何だか面白くない御様子。氏郷公は香炉を賞美されたが、幽斎公はこれといってお答えになることもない。氏郷公は帰宅後、不審に思ったものの、誠に思い当たるふしがなかった。 ある時、氏郷公はこの時のことを「幽斎公は非常に仁愛和厚の人であるのに、その夜の振る舞いは理解し難かった」と連歌師の里村紹巴に語ったところ、紹巴は首をか

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